噴き出していた

噴き出していた
「だから、あの扉は、ヤッパリあるんだってば!」
裕太は、颯太に訴えた。
「ホントなんだって!夢に見たんだから、間違いない」
裕太の言葉に、颯太は澳門自由行、思わず岸本先生と顔を見合わせ、噴き出していた。

ここは、例の社会科準備室。
昼休憩に入るなり、裕太は颯太を、教室から連れ出し、先生に会いに行ったのだ。
颯太は、何をそんなに一生懸命なのかわからず、
「どうしたんだよ、裕太!こんなトコ行かずに、外でサッカーでも、しようぜ!」
と、からかったが、
(実のところ、颯太は、サッカーも野球も、
苦手である)
この日はかたくなに、裕太は鑽石水、「それよりも、大事なことがある」
と、強引に、颯太の手を引っ張った。
「えっえっ、裕太は、そんなに先生が好きなの?」なんて、冷やかされつつ。
そして、先ほどの発言である。

先生は、突然の訪問で、面食らっていた。例によって、アルコールランプで沸かした、コーヒーを飲みつつ、黙って二人のやりとりを聞いている。
実のところ、なんら説明を受けてないので、二人の会話についていけてないのである。
そしてようやく、合点がいって、
「要するに、思い出したってこと更年期?」
と、口を挟んだ。
裕太は、先生を振り返り、
「思い出した、というのは、違うんだな~」と言い、
「出てきたんだ、夢に。見つけたんだ、鍵の入った箱!」
と言った。
先生と颯太は、顔を見合わせ、はっ?という顔をした。
(どうせ、信じてくれないんだ)
裕太は、少し、ふて腐れた。
「だって、ホントに見たんだもん!木のうろに手を突っ込んだら、木の箱が入ってて、中を見たら、鍵が入ってたんだ」
「鍵?また、鍵?今度はなんの鍵?」
颯太は、クスクス笑いながら、聞いてきた。その目、本気にしてないんだな…と、裕太は、颯太を見て、先生の顔を見た。颯太は、呆れた顔だし、
先生は、戸惑った顔をしていた。
そう…と言いつつ、
「信じてあげたいけどね~夢なんでしょ?
なんか。そういうテレビとか、ヤラセなんじゃない?」
明らかに、声は笑いを含んでいた。
裕太は、どうやって、信じてもらおうかと、考えていた。
「確かにね、予知夢などを、見れるのはすごいけどね。でも、そういうのは、ある一部のすぐれた人にしか、わからないものだ。僕みたいな凡人には、思いもよらないよ」と、間延びした声で言い、「ジャ。颯太くんの事、信じるわ」

先生は、どこまで信じてくれたのか。
だけれども、
「もう一度、行ってみるかい?」
と言ってくれた。
裕太は、先生に。飛びつきたい衝動に駆られた。
「えぇー!この前、行ったのに!」
颯太の言葉に、先生は、「まあまあまあ」
なんだか、苛ついた気持ちを、裕太は、必死で抑えた。
「この前は、刑事さんもいて、中々探しにくかったからね!」
さすが先生は、大人の余裕で、話を聞いてくれようとしている。
「ま、何にせよ、気が済むまで、すればいい。納得しないと、次に進めないよね!」



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2016年05月16日 Posted byfeirisnge at 12:47 │Comments(0)tone

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